前回、Oculusにおけるハンドトラッキングに感じた課題について記してみたが、Oculus Developers Documentsにもこれらに関する記述を見つけることができた。
触覚フィードバックが得られない
触覚フィードバックは、ドキュメント中でも再三取り上げられている重要な要素であった。その中でも解決方針として示してある「原則」の記述が興味深かった。
すべてのインタラクションで、明確なシグニファイアと継続的なフィードバックを通してアフォーダンスを伝えることを強くおすすめします。
また同項の「マルチモーダルな未来を見据えて」では、状況や用途に応じ操作手段をユーザーが選び分ける「Multi-Modal」な展望を描いており、ユーザーがコントローラを手放さざるを得ない状況下で、ハンドトラッキングが継続的な操作を提供する一助になる可能性について触れている。
さらに「手はコントローラーではないことを銘記する(Remember That Hands Aren’t Controllers)」には、既存のコントローラを前提として作られたUIを、ハンドトラッキングにそのまま転用することは非推奨であり、手ならではのインタラクションを探る必要性を説いている。
また「ベストプラクティス」には、素手が触覚フィードバックを提供し得ない課題に対する「セルフハプティクフィードバック」なる新たな概念も登場する。
親指と人差し指を接触させることは、ボタンのクリックや、ユーザーがオブジェクトを掴んでいる感覚に代わるものとして十分に機能します。
ヘッドセット観測域外での操作ができない
「ベストプラクティス」項の「トラッキングボリューム」は、ヘッドセットがトラッキング可能な領域による制限について網羅している。加えて両手が重なり合う事例を挙げて、片手のみで実行できるインタラクション設計を推奨している。
この章末には以下の記述がある。
まだ始まったばかりですが、考えなければならないことが山ほどあります。皆さんが見つけた解決策が人類を信じられないほどすばらしい新しい可能性に導くことを願っています。
ガイドラインによって開発者の描く体験を制約するよりもむしろ、VRが発展途上の技術であることを認めた上で、開発者に探究を推奨するというOculusの姿勢が表れている。まさに今がVRの黎明期に位置していることを感じさせる。